デザインカンパニーとしての歩み

現在、カスタールは、精巧かつ高品質で、美しいデザインのラグを生み出すメーカーとして、その名を世界に轟かせています。彼らのものづくりを支えるのは、自社のデザインチーム、カスタールデザインスタジオです。ラグづくりにおいては、デザイン思考に加え、素材や使用する機械の知識、染色や染料の配合、糸の製造、織りやタフトの技術をも熟知していなくてはなりません。カスタールデザインスタジオは1950年代に設立して以来、そうしたラグづくりのノウハウを大切に受け継いできました。

カスタールで最初の専属デザイナーとして迎え入れたのが、スウェーデンを代表するテキスタイルデザイナー、Ingrid Dessau(イングリッド・デッサウ)です。彼女は1954年から1978年までチーフデザイナーとして活躍し、カスタールをデザインカンパニーとして大きく成長させました。1987年には、Gunilla Lagerhem Ullberg(グニラ・ラーゲルヘム・ウルベルグ)がデザインマネージャー兼アートディレクターに就任。HäggåやMoss、Foggなど、現在も愛され続ける数多くのロングセラーを手掛けた彼女は”The Queen of Rugs”(ラグの女王)と称され、カスタールの新たな歴史を作り出しました。

カスタールでは、Jonas Bohlin(ヨナス・ボーリン)やJean Marie Massaud(ジャン・マリー・マッソー)、Paola Navone(パオラ・ナヴォーネ)など、世界の名だたる建築家やデザイナーとコラボレーションを果たしてきました。カスタールデザインスタジオが蓄積してきた知識と技術により、デザインの歴史に刻まれるべきこれらのラグが生まれたといっても過言ではありません。

彼らは、1950年代から現在までに生み出してきたほとんどのラグのサンプルと、デザイナーが残したオリジナルスケッチや写真、生産工程の記録を、財産として大切に受け継いでいます。これらのアーカイブは、カスタールにとってインスピレーションの源泉。再構築され、新たなアイデアとして生まれ変わることも少なくありません。

一本の糸を撚るところから

カスタールのラグを語るうえで欠かせないのが「糸」です。無数の糸を、織り上げたり打ち込んだりすることででき上がるラグ。つまり、ラグの印象をかたちづくるのは一本の糸です。だからこそカスタールでは、糸そのものから開発することにこだわっています。糸がラグのデザインや品質を左右する根幹を成すものといっても過言ではありません。

カスタールのラグに使用する糸は、すべてが天然繊維。通常のスタンダード糸に加え、表面に輪状の糸が出るよう加工された撚り糸のブークレ糸、毛羽のある飾り撚り糸のシェニール糸の3種。このブークレ糸とシェニール糸は、自社工場で一本一本撚り合わせています。ラグのデザインによってこれらの糸を使い分け、奥行きのある独創的な表情を作り出しています。

ウールとリネンの配合を変えたり、複数色をまぜてメランジカラーに仕上げたり、オーバーダイ(ヴィンテージのような趣ある風合いに加工すること)を施したり……。たった一本の糸に、素材や色、風合いと、繊細なニュアンス表現するのがカスタールの真骨頂といえます。

そうして生み出した糸は、パイルの長さや形状、配色、パターンなどを自在に組み合わせ、一枚のラグとなります。近年、グラフィックで個性を表現するラグメーカーが多いなか、カスタールでは一本の糸にとことんこだわり、独創的なラグを生み出している数少ないメーカーなのです。